
その生涯をかけて取り組んだ久保田一竹の辻が花染め、端正な仕事をご紹介します。現代に復活した伝統の手法、本物の辻が花染めを、お確かめください。


当初は絞りだけの簡素な模様であったものが、室町時代後期に入り、絞り染めに描き絵・摺箔・刺繍などを併用する技術が発達し、公家や禅僧の服飾にも用いられるようになります。その後、技術、図案が発達し、文化的にも美しく華やかなものが好まれた桃山〜江戸時代初期、辻が花染めはその全盛を迎えます。
しかし、江戸時代後期には、細かい模様は友禅染や刺繍その他の技術での表現が主流となり、絞りを主にした辻が花染めは次第に消えてゆきました。
この辻が花染めに出会い、魅了され、一生をその研究につぎ込んだ人物が久保田一竹です。二十歳のとき、東京国立博物館で室町時代の「辻が花染め」の小裂に出会った久保田一竹は、その日以来、辻が花染めの美に魅せられます。
召集、敗戦、ソ連への抑留など時代の波に翻弄され、本格的に研究に取り組めるようになったのは40歳になってから。その後も赤貧の時代を経て、過去の模倣でなく、現代に息づく染色としての独自の『辻が花』を生み出します。その壮大な作品とその技術は、偉大なる芸術として世界各国で賞賛を得ることとなりました。

